経済産業省と中小企業庁の令和9年度概算要求に、設備投資を支える制度がいくつも並びました。省力化投資補助金やものづくり補助金を今年度に使った事業者からも、使いそこねた事業者からも、「来年度はどうなるのか」という質問をいただきます。
公表された資料から読めることと、読めないことを分けて整理します。概算要求は公募要領ではありません。補助率も上限額も公募時期も、この段階では決まっていません。
結論:制度は続く見込み。ただし名前と枠組みが変わる
中小企業庁の資料には、独立行政法人中小企業基盤整備機構運営費交付金6,980億円の内訳として「省力化・デジタル化・AI投資補助金」が挙がっています。人手不足や生産性向上等の課題を抱える中小企業・小規模事業者等を対象に、業務効率化やAX・DXの推進に向け、AIを含むデジタル技術の活用や省力化設備の導入を一体的に支援する、という説明です。
いまの中小企業省力化投資補助金と読み比べると、デジタル技術とAIが正面から入っている点が違います。名称も支援の切り口も変わる可能性があるため、現行の省力化投資補助金がそのまま続くと考えないほうが安全です。
概算要求に並んだ設備投資系の制度候補
出典:中小企業庁「令和9年度概算要求等のポイント」(最終確認日 2026年9月1日)。要求額であって、採択規模でも成立予算でもありません。省力化・デジタル化・AI投資補助金は交付金の内訳として記載されており、単独の要求額は示されていません。
従来のものづくり補助金と新事業進出補助金は、2026年に「新事業進出・ものづくり商業サービス補助金」へ統合されました。令和9年度の要求では「補助事業」という名称で2,200億円が計上されています。
「売上高10億円を目指す宣言」が要件になる方向
新事業進出・ものづくり商業サービス補助事業について、概算要求資料には次の一文があります。成長志向型の中小企業をより多く創出していく観点から、売上高10億円を目指す宣言を原則として要件化する、というものです。
売上高100億円超を目指す企業向けの「100億宣言」は、すでに中小企業成長加速化補助金の申請要件になっています。同じ考え方を、より手前の規模の企業にも広げる方向です。小規模事業者持続化補助金でも「成長志向の経営計画(仮称)」の宣言が絡み、その仕組みの構築と運用に小規模事業対策推進等事業175億円が充てられました。
100億宣言では、ポータルへの公表手続きに通常2〜3週間かかります。同じ形の仕組みになるなら、宣言の準備は公募要領の公表を待たずに始めるほうが確実です。詳しくは「「100億宣言」とは?」をご覧ください。
今年度の公募を使うか、来年度を待つか
来年度の制度は、補助率も上限額も対象経費も公募時期も未定です。したがって「待てば有利になる」とは言えません。判断の材料になるのは、自社の設備の更新時期と、今年度の公募に間に合うかどうかです。
- 補助率・上限額・対象経費が公募要領で確定している
- 設備の更新時期が決まっている
- 締切から逆算した準備期間が取れる
- 制度の内容が固まるのは公募要領の公表後
- 設備の入れ替えを急いでいない
- 宣言の要件化など、新しい入口要件に対応する時間が要る
補助金は、交付決定通知の前に締結した契約・発注が対象外になる制度が多くあります。「来年度の制度で申請するつもりで、先に設備を発注しておく」という進め方は成り立ちません。
待つ場合でも先に進めておけること
制度が固まる前でも、申請の中身にあたる部分は動かせます。公募要領が出てから着手すると、締切までの時間を書類作成だけに使うことになりかねません。
- どの工程が人手を使っているかを、時間で把握する
- 機械やシステムに置き換えたときに何時間減るかを見積もる
- 導入したい設備の仕様を固め、複数社から見積を取る
- 賃上げの計画と、その裏付けになる収支を組む
- 成長の方向性を、宣言の要件化に耐える形で言語化する
設備の見積は、取り直しに時間がかかるものです。仕様の検討を先に済ませておくと、公募が始まってからの動きが速くなります。
よくある質問
Q. 省力化投資補助金は来年度もありますか?
令和9年度概算要求では「省力化・デジタル化・AI投資補助金」という名称で、中小機構運営費交付金6,980億円の内訳に挙がっています。ただし要求段階であり、名称も枠組みも今の省力化投資補助金とは変わる可能性があります。
Q. 今年度の公募を使うか、来年度を待つべきですか?
来年度の補助率も上限額も公募時期も未定です。設備の更新時期が決まっているなら、今年度の公募で判断するほうが確実です。待つ場合も、交付決定前に発注すると対象外になる点は変わりません。
Q. 売上高10億円を目指す宣言とは何ですか?
新事業進出・ものづくり商業サービス補助事業について、成長志向型の中小企業をより多く創出する観点から、売上高10億円を目指す宣言を原則として要件化すると概算要求資料に書かれています。仕組みの詳細は今後示されます。
本記事は、経済産業省・中小企業庁が公表した令和9年度概算要求資料(2026年8月31日公表)に基づく一般的な解説です(最終確認日:2026年9月1日)。概算要求は、政府予算案・成立予算・公募要領ではありません。制度名、補助率、上限額、対象経費、公募時期は今後変更されます。最新情報は経済産業省の公表ページおよび中小企業庁の予算関連ページをご確認ください。
補助金・在留資格に関する申請書類の作成および官公署への提出代理は、行政書士法に基づき当事務所(東京都行政書士会所属)の行政書士が行います。制度の選定支援・事業計画づくり・経営に関する分析等の非独占業務は、提携する株式会社LENKERが提供します。事業計画書の確認が中小企業診断士・公認会計士・税理士に限定される制度(在留資格「経営・管理」等)については、当事務所は確認主体とはならず、提携専門家をご紹介のうえ申請書類の作成・提出代理を担当します。
まとめ
設備投資を支える制度は令和9年度も続く見込みですが、名称と枠組みは変わります。AIとデジタル技術が正面に入り、宣言のような入口要件が広がる方向です。
いま決められるのは、どの工程を機械に任せるか、その設備をいくらで入れるか、という自社側の中身です。ここが固まっていれば、どちらの年度で申請することになっても動けます。設備の検討段階からご相談ください。
更新履歴:2026.09.01 初版公開(令和9年度概算要求を反映)